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昭和・平成・令和を駆け抜けた観光列車「リゾートやまどり」

 

昭和・平成・令和を駆け抜けた観光列車「リゾートやまどり」

2023年6月14日
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走行する観光列車「リゾートやまどり」

先日、TOMIXより「JR 485-700系電車(リゾートやまどり)」が製品化されることが発表されました。
この「リゾートやまどり」は、JR東日本が群馬の魅力を発信するために観光に重きを置いた車両で、国鉄時代に活躍していた485系を改造して2011年に誕生した「観光列車」。
2022年に惜しまれつつも運行が終了したことから、昭和・平成・令和の時代を駆け抜けた列車とも言えます。

「リゾートやまどり」は群馬県内で運行していた車両ですので、関東以外にお住まいの方には、あまりなじみのない車両かもしれませんが、観光に重きを置き、利用者のニーズに応えるべく誕生した「観光列車」は、実は国鉄時代から存在しており、車両に備えられた設備などを年代を追って見てみると「リゾートやまどり」の車両の特徴はもちろん、当時の観光スタイルや世の中のニーズなども知ることができ、なかなか興味深いのです。

そこで今回は国鉄時代から始まった「観光列車」そして「リゾートやまどり」について詳しくご紹介します。


時代とともに変化する「観光」と生まれ変わる「車両」

1950年代から、当時の国鉄では、従来の客車を改造した「お座敷列車」を生み出し、団体旅行などに活用されていました。 現代の感覚からすると「え?電車での移動にお座敷?」と思われるかもしれませんが、当時、一般的な生活様式は座卓で食事をするなど和風がほとんどで「靴を脱いでくつろげる」というお座敷の様式は多くの方に受け入れられ、人気がありました。

そして1980年代後半になると、バブル景気も後押しし、団体列車での社員旅行やツアーも増加。 この頃になると生活様式も次第にソファーや椅子などの洋風が一般的になり、お座敷スタイルの車両を利用していた人たちも高齢化となり利用者数も減少傾向に。そこで洋風化を念頭に置いて新たな車両の製造を計画。そして1983年に14系客車を改造して生まれたのが「サロンエクスプレス東京」という車両。

走行する「サロンエキスプレス東京」

個室で構成された車内にはソファを設置。先頭と最後尾の車両の端にはフリースペースを設け、大きな窓を取り入れることで、移動中の景色を存分に楽しめる仕様は当時としては画期的な車両でした。
これまでのお座敷スタイルの車両に加え、洋風の車内の車両も加えるなど利用者のニーズに合わせた車両を揃えるだけでなく、車内にサロンやラウンジコーナーを設けたり、展望が考慮された構造や座席の配置するなど、観光に重きを置いた車両のことを「ジョイフルトレイン」と呼び、各グループが積極的に車両の製造に乗り出しました。

実はその頃、定期運行を終えた車両が増えていました。それは485系。
1968年の国鉄時代に登場し、多く製造された車両である485系は、1987年の国鉄分割民営化後のJRとなってからも全国各地のエリアのニーズ合わせて多くの車両が活躍していました。
しかし新幹線の路線網の拡大によって在来線特急列車が縮小、さらに車両の老朽化による新型車両への置き換えが進んだことから、485系が続々と定期運行を終えることになったのです。
そこで「余剰車両となってしまった485系を活用しよう!」と国鉄時代から活躍していた様々な「ジョイフルトレイン」の後継車両を迎え入れるタイミングも相まって、結果として485系をベースにして改造・車体新造などを行うケースが増加したのです。

こちらはその一例。1997年に登場し2022年10月に引退した、団体専用のジョイフルトレイン 485系 お座敷列車「華」です。

走行する485系お座敷列車「華」

掘りごたつ様式の485系お座敷列車「華」

掘りごたつスタイルのお座敷列車にして利用者に快適な旅を提供するだけでなく、お座敷として使用しない場合には床をフルフラットにできるよう昇降装置を内蔵するなど、これまでの利用者からのニーズに応えるべく、様々な用途に活用できるように改造する車両も登場しました。


昭和・平成・令和を駆け抜けた「リゾートやまどり」は改造に改造を重ねた車両

先にご紹介したように、なぜ485系を改造した「観光列車」が多い理由が分かったところで、続いては「リゾートやまどり」ついて詳しく見ていきましょう。

観光列車は増える中、やってきたのが「バブル崩壊」。ここから旅のスタイルも大きく変化します。
不景気となったことで、社員旅行を実施する企業も減少。結果として団体専用列車を使う機会も減ることになりました。そして、観光スタイルも少人数での旅行やバスでの旅行が主流となり、新たなニーズにフィットする車両が必要となったのです。

そんな中で登場した車両のうちのひとつが、2011年に誕生した485系の「リゾートやまどり」。

2011年と聞いて、多くの方が思い浮かべるのは、やはり「東日本大震災」ではないでしょうか?
この年は被災地だけでなく、全国各地において自粛ムードが広がり、旅行需要も冷え込むなど様々なところに影響が出ていました。

なぜ、旅行需要が冷え込んだ、このタイミングで新たに「観光列車」を誕生させたのか?
実は2011年に、JRグループは青森県から鹿児島県まで新幹線がつながって1周年を迎えるにあたり、先に紹介したように旅行需要が冷え込んでいたこともあり「観光の力で日本を元気にしたい」と国内観光地などのさらなる活性化を図ることを目的に、各地で様々なキャンペーンをスタートさせました。 その中のひとつがJR東日本が企画したのが「群馬デスティネーションキャンペーン」。
関東一の急流である「利根川」、2014年に世界遺産に登録された「富岡製糸場」、良質な泉質を持つ「草津温泉」など、群馬の魅力を発信するためにJR東日本は新宿、池袋駅~長野原草津口駅間に特急列車を、高崎駅~万座・鹿沢口駅間に快速列車を運行することにしました。

さて、観光地を巡る車両が必要になる訳ですが、新たに車両を製造するのにはコストがかかります。
そこで余っていた車両を改造して生まれたのが、今回ご紹介する「リゾートやまどり」。
車両名に「485系」とありますが、実は改造に改造を重ねた「再改造」の485系車両。それも2種の車両を合体して誕生した車両だったんです。

ちなみに「リゾートやまどり」の改造前の車両がこちら。「やまなみ」と「せせらぎ」です。

走行する485系「やまなみ」

1999年に485系を改造した、お座敷車「やまなみ」の中間車2両が再改造の対象に。

走行する485系「せせらぎ」

そして2001年に485系を改造した、お座敷車「せせらぎ」の4両編成が再改造の対象となりました。
この再改造した2つの車両を編成し、6両編成とした車両が「リゾートやまどり」という訳です

走行する観光列車「リゾートやまどり」

車体は、茶色と濃萌黄色に。 茶色については実は「ぶどう色2号」という色名がついています。これは国鉄時代に走っていた蒸気機関車の客車や電気機関車EF55に使われた色で「懐かしさ」を表現。さらに濃萌黄色は、春に芽吹く草の芽を表現する色として、群馬の山々の豊かな自然と「リゾートやまどり」の車両が「新しく芽吹く」という意味も込めて選ばれた色。
そして車内ですが、改造前の各車両はいずれもお座敷車だったのですが、「リゾートやまどり」では座席式となりました。

観光列車「リゾートやまどり」の車内の様子

こうして車内の様子を見てみると天井の照明に、お座敷列車時代の和風な雰囲気が感じられますね。
ご覧の通り、1列+2列タイプのシートの車内は、後ろの席の方に圧迫感を与えることなくリクライニング可能で、十分に足をのばしてリラックスできるなど、座席の前後にも余裕を持たせた仕様は、まさに「個」の旅を楽しむというニーズに応えた車両。
とはいえ、お子さん連れの方に重宝されたカラフルなカーペットとおもちゃ・絵本が用意された「キッズスペース」や、壁面には上毛三山(赤城・榛名・妙義)を描いた畳が敷かれたスペース「和室ミーティングスペース」なども用意され、幅広い年代の人が利用できる車両となった「リゾートやまどり」。
主に吾妻線の観光地へ向かう特急「リゾート草津」、快速「リゾートやまどり」や上越線の国境区間を巡る快速「谷川岳もぐら」「谷川岳ループ」において活躍。まるでグリーン車のようなゆったりとした座席の仕様も相まって、利用者からは大変好評だったようです。

このように改造に改造を重ねた結果、群馬県の観光地の足として活躍した「リゾートやまどり」ですが、純粋な485系の部分は結果的に床下機器や台車などの部分のみ。そのため国鉄時代の485系に思い入れのある一部の方からすると再改造された車両が485系と呼ばれることに、複雑な思いをされる方もいるとか、いないとか。

ちなみに「リゾートやまどり」は、群馬を中心に運行することから車両の名前は、群馬県の県鳥「やまどり」に由来しています。

群馬県の県鳥「やまどり」

「やまどり」はキジ科の鳥です。尾が長いのが特徴でオスになると約90cmほどの長い尾を持つものもいるとか。

観光列車「リゾートやまどり」の車両の側面にプリントされたロゴ

「リゾートやまどり」の車両の側面にはロゴが入っていましたが、そこにも「やまどり」が描かれていて、なかなか愛らしいロゴでした。

赤城山と観光列車「リゾートやまどり」

しかし国鉄時代に登場した485系も製造から約50年。当時から搭載されている機器などには老朽化が進み、故障が起きやすくなるなどの問題も発生。
さらにメンテナンスをしたくても部品自体が入手困難となっていることから、近年では485系の車両が、定期的に細かい部分まで検査を行う「重要部検査」や「全般検査」を受ける前に運行終了となっているようです。

そうした事情もあり「リゾートやまどり」も2022年12月に運行終了。
その後、高崎車両センターから郡山総合車両センターへ回送され、年内に全車両が解体となりました。
時代とはいえ、やはり昭和・平成・令和と駆け抜けた車両の終焉は寂しいものです。

そんな中で今回、TOMIXからの「リゾートやまどり」のNゲージモデルの製品化は、既に実車が現存しない中で、様々な角度から「リゾートやまどり」の姿を楽しめる良い機会ではないかと思います。
まだご予約されていない方や、今回の記事を見ていただき気になった方は、ぜひこの機会に手に入れて、ご自宅で楽しまれてはいかがでしょうか?

今回はTOMIXより再生産が発表されたJR東日本の485-700系電車「リゾートやまどり」についてご紹介しました。



JR 485-700系電車(リゾートやまどり)セット(6両)

1968年に登場した国鉄を代表する交直流両用の特急型電車「485系」を基に改造を行う形で2011年に登場した「リゾートやまどり」。2022年12月に引退した車両が6両セットとなって登場です。